「暮らしの中の庭づくり」庭の環境と植栽計画
「フローラルガーデンの庭仕事」H29年3月17日の内容です。次回は4月21日「植物の仕組み」基本的な植物の性質。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉 ケイズガーデン 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー)
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで
「暮らしの中の庭づくり」庭の環境と植栽計画
What is your garden design ?
あなたが小さな庭を持っていて、そこをもっと良い形に利用しようと思った時、プロのガーデンデザイナーに頼む必要はありません。あなたが気づいたちょっとしたこと、こうしたいと思ったことを紙にいたずら書きするだけでデザインは始まります。
by Alan Titchmarsh
1、 あなたの庭に必要なのは?
庭づくりをする多くの人は一か八かで始めます。子どもが遊ぶために芝生を敷いたり、物置に向かって小径を造ったり、ガーデンセンターで気に入った材料を買ってきてくつろぐスペースを作ったり。それらはどんどん増えていって大きくなり、いくつかは考えていた枠をはみ出します。
私の経験では人々が庭づくりに求めているのは「進化」または「革命」のどちらかです。
「進化」は決して終わることがありません。庭を持った時から始まり、あなたのライフサイクルに合わせて変化します。子どもが大きくなると庭は子どもの遊ぶ庭から大人の庭へ、あなたのお気に入りの庭へ変えることが出来ます。あなたの庭に必要なのは長期計画と短期計画です。
「革命」は今あるものを壊すことから始まります。コツコツ数年かけて気に入った空間を自分で作り上げる人や、ガーデンデザイナーに設計を頼み、造園業者に施工をしてもらう人もいます。しかし、理想の庭を得られるようになるには時間がかかります。植物が思ったように育たないこともあります。計画通りに行かないことを悪く思わないで下さい。計画は良いアイデアに過ぎません。深みにはまる前に柔軟に考えて下さい。
2、デザインによる問題解決
自然の法則から離れたところからスタートする庭もありますが、それは大変難しく、お金がかかります。戦わないで、問題を見つけたら自然の声に耳を傾けて下さい。全体を見渡して自然の法則に従うことが「たったひとつの庭」を作り出すことができる、一番簡単で唯一の方法です。
① 海辺の庭
強い風が吹き、砂や塩が積もる海辺のガーデン。その土は通常厳しく、砂利や砂ばかりで栄養が乏しいものです。これらのコンディションでは普通のガーデンプランツは生育することが出来ません。
〈解決するデザイン〉
2つの方法があります。ひとつは海辺のガーデンにする方法です。海辺に生えている植物を選び、流木や貝殻、丸石を使い、海辺らしさを演出します。
もうひとつは材料を慎重に選び普通のガーデンに見せる方法です。潮風に強いクロマツやマサキ、ガーデンフクシア、エスカロニアなどを使い、庭を作ります。
②夏中地面が乾かない湿った土地
多くのガーデンプランツは適当に水はけの良い土地を好みます。なぜならソイルスープ(水のたまる場所)の中に根がつかったままだと根腐れするからです。
〈解決するデザイン〉
このような土地には湿地ガーデンを作ります。もつれた枝や木の固まりを入れ、本物の沼地の様な特徴を出します。柳のパネル、雰囲気のある風化したガゼボも良い演出材料です。
沼地の周辺で生育している植物は5cmほど水に浸かっています。下が水に浸かっている状態で生きている自然界の植物はスティック状の葉の形をしているものが多く、このタイプの植物は低地で冬に水が溜まる場所でも使用できます。ホスタやカンデラブラ プリムラ(中国原産のサクラソウ)など湿気が好きな多年草や、自然の小川周辺に生息する植物を見つけて植えることも良いでしょう。場所があるならグンネラもお勧めです。ただし、大きくなりすぎるので家庭の庭には向いていませんが。
③日当りの良い傾斜地
この環境は乾きが早く、植物は乾燥に苦しみます。加えて、その土は激しい雨によって流されてしまいます。あなたがブドウ園を欲しくない限り、そこはあなた好みの植物にとって、最も厳しい環境かもしれません。
〈解決するデザイン〉
石積み等で土留めをしてテラス花壇を作り、乾燥を好む植物を植えます。日当たり好きなシュラブや多年草、ロックガーデンプランツを植えましょう。そこは夏には特に乾燥することを忘れないでください。常緑のものを多用し、冬にも見栄えが良いようにしましょう。
④林の中の木陰
夏に影になるこの場所はカラフルなボーダーガーデンプランツを育てるのは難しい場所です。大きな木の下は乾きやすいと理解している人も多いかもしれませんが、天然の林は違っています。枝が密に重なり、落ち葉が堆積している地面には有機質材料がたっぷりあり、水分が保たれる環境になっています。日陰好きな植物にとっては完璧な土壌がそこにあります。
〈解決するデザイン〉
腐葉土の下で育ちやすい早春咲きの球根、宿根草など日陰を好む植物を植栽します。紅葉や林床植物、アジュガ、サクラソウなどが向いています。もし土壌が酸性に偏っているなら、ロードデンドロンや椿などのように酸性を好む植物を植えると良いでしょう。
3、 様々なガーデンデザイン
イングリッシュガーデンと一言で言っても伝統的なデザインから現代の庭まで様々な庭があります。イギリスで作られている庭の特徴を簡単にまとめました。
現代の庭
【植物】シャープでスタイリッシュな植物。多肉植物やオーナメンタルグラス等
【構成材料】伝統的な材料ではなく工業的な材料を多用。ガラス、ステンレス、銅管等
【特徴】次世代を感じさせるデザイン。植物壁等。明るい色彩の壁や床のデザインでドラマティックな植物をシンプルに植栽
ナチュラルガーデン
【植物】原種系の植物。その地域に自生している植物
【構成材料】ビオトープになるような自然な生態系を作る。倒木や自然石など自然環境に存在するものを利用する
【特徴】自然な風景に見えるように作るデザイン。柳やヘーゼルなどの自然素材を使ったフェンスに植物を絡めて自然な風景を演出
ファミリーガーデン
【植物】木登りやフットボールに耐えられる丈夫な植物。毒素やかぶれる物質を持つ植物は避ける
【構成材料】芝生やバークチップなどで覆い、走ったりスライドしたりできるようなオープンスペースを確保
【特徴】活発に遊ぶ子供中心の庭。自分自身の手で育てる子供用の果樹や野菜ポットを与え、収穫を体験させると子供が庭づくりを楽しめる庭としても活用できる
ペイブドガーデン(舗装された庭)
【植物】鉢植えに向く植物。ハーブや小型の樹木
【構成材料】砂利や石材で地面を覆う。ポットや家具でポイントになる景色を作る
【特徴】色や形の面白いものを所々に混ぜてデザイン。砂利や構造物で特徴を出す
コテージガーデン
【植物】様々な多年草、花木、シュラブ、球根等
【構成材料】草花を中心としたボーダーガーデンと芝生で構成。風化した構造物を景色として利用
【特徴】ボーダーガーデンと芝生を中心に小径などで区切りながらデザイン。オベリスクやガゼボ等で立体感を出す
フォーマルガーデン
【植物】トピアリーやボックスウッドなど刈り込みに強い常緑樹
【構成材料】石やレンガの壁、生垣で区切られた空間を構造物で演出
【特徴】直線的なデザイン、四角いコーナーで構成される。彫像やトピアリーをポイントに置くデザイン
〈参考文献〉
The Complete How to be a Gardener / Alan Titchmarsh