「種から育てる植物」一年草と二年草
「フローラルガーデンの庭仕事」H29年9月15日の内容です。次回は10月20日「剪定と整枝」植物の気持ちに添った枝の切り方。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉株式会社フィーカ 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー)
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで
「種から育てる植物」一年草と二年草
What are seeds ? 〜 種って? 〜
種には新しい植物の「はじまりのもと(biginnings)」が入っています。それは生きている生物体で、コーティングに守られている小さな植物。静かに休んでいて、休眠状態でゆっくりと代謝を続けます。成長が始まる要因に出会い、細胞が刺激されるまで。
by Chris & Valerie Wheeler
1、種の機能
① 繁殖 (REPRODUCTION)
種は植物を繁殖させる最も一般的な方法です。植物は彼ら自身を何度も何度も複製することで生き残り、新しい世代に性質が受け継がれます。種での繁殖を成功させたことは、野生でいくつかの植物が生き残ってきた秘訣であり、リスクを伴うものでもありました。
植物の次の世代は両親から離れ彼ら自身で自立する必要があります。莫大な数の種は、少しでも生き残り、次の世代を生育させるために必要な手段なのかもしれません。幾つかの種は何年かとどまっていることが可能です。彼らは干ばつや極端な温度が過ぎるまで待ち、良い環境が訪れた時革命を起こします。
② 変化 (VARIATION)
種からの繁殖は植物間で多様な個体群を作ります。花粉と胚珠により運ばれた遺伝子を組み合わせることにより異なる性質が混ざり、新しい独特の植物を生み出します。特定の組み合わせの遺伝子は植物や植物のグループにいつくかのおもしろい特徴を作ります。遺伝子的な性質と外見上同じように見えるものなどです。種は両親の遺伝子の組み合わせにより新しい性質が生み出され、この植物は両親の性質を反映します。種は親の系統や特質を持ちますが、完全なレプリカではありません。この有性生殖の結果、植物の間で変化が起こります。そして時間をかけて環境に適応していきます。
③ エネルギー貯蔵庫 (ENERGY STORE)
種は胚から成長するためにエネルギーを貯蔵する必要があります。水や栄養が植物内を移動し光合成することにより作られた炭水化物や脂質、たんぱく質は、葉から種へ移動し蓄積されます。
2、発芽
① 発芽の過程 (GERMINATION PROCESS)
種が水を得て、湿気を含み、膨張する → 新陳代謝が増え、特に呼吸が増えることで酸素を要求するようになる(水たまりに要注意) → 胚が成長し、コーティングを壊し、成長点が動き出す → 新しい細胞が作られ胚から成長した子葉が生まれる → 幼芽や根が伸び成長する
② 幼芽の種類 (TYPES OF GERMINATION)
発芽が始まった時、子葉は土の上に出てきます。緑色に変わり、最初の葉が現れます。茎が伸び、成長点の中からその植物の本当の葉、本葉が生まれます。初めの葉が本葉と異なるのは、幼根が発達しヒゲ根が伸びるまでの間、子葉にある栄養で成長させるためです。
③ 発芽が遅れる原因 ( OVERCOMING DELAYED GERMINATION)
・より生き残る可能性の高い環境になるまで発芽を待っている
・種の表面が固すぎて発芽できない → 傷をつけるか、水につけることを望んでいる
・胚が未熟だった → 十分熟すまで待って蒔く
・種の表面に成長阻害物質が付着している → よく洗い流す必要がある
・収穫時の種が未熟だったため発芽しない → 十分熟しているのを確認して収穫し直す
④ 発芽に影響を与える要因 (FACTORS AFFECTING GERMINATION)
【水】
発芽が遅れる原因で最も多いのが、発芽に必要な水分の不足です。もし種が乾いてしまったら発芽しなかったり、数量が減ったりするでしょう。また、水が溜まった状態は種に運ばれる酸素がなくなり、枯れる原因になります。
【温度】
多くの種は発芽適温を持っています。幾つかの種は適温より低い温度でも発芽することがありますが、成功率は低いでしょう。低温で発芽する多くの野菜は高い温度を敏感に感じ取ります。レタスやセロリなどは25℃を超えると発芽に失敗します。自然界では暑く乾きやすい夏は発芽が抑制されるからです。
【光】
光は一部の種の発芽に刺激を与えたり抑制したりする働きがあります。光を必要としている種(好光性種子)はレタス、セロリ、ほとんどのグラス類、多くの草本性植物、多くのコニファー類を含みます。
3、あなた自身の種を保存(SAVING YOUR OWN SEED)
庭から種を集めることは多くの植物の群落を作る素早い方法です。しかし、自家採種した種から同じものが生まれるとは限りません。種は他の幾つかの遺伝子が交配して生まれています。例えば、ジギタリスは300m先から他の遺伝子が届きます。品種名を持つ植物の種の自家採種は、異なる種類が生まれる可能性があります。F1ハイブリッドは種をつけることができない植物です。
4、種まき後のケア
種を蒔いた後、しっかりとした水管理が必要です。水やりはとても慎重に、細かい水の出るハスクチを使用することが大切です。優しく湿らせるようにし、種が浮いて流されないようにしましょう。水の量は控えめに土が湿る程度にします。水がたまってしまう状態は避けなければいけません。
発芽が始まったら土が乾く時間も作る必要があります。可能であれば早朝に水やりをし、日中は乾かすようにしましょう。乾湿を繰り返すことで根の成長を促進します。
種まき後に使用する水は水道水などクリーンなものにしましょう。雨水などはバクテリアや病原菌が含まれていることがあり、抵抗力のない幼苗にダメージを与える可能性があります。
5、種から育てる一年草と二年草
① 一年草と二年草の違い
一年草は一年間の間にライフサイクルが完結する植物です。発芽、成長、開花、種生産のすべてを一年の間に行い、そして枯れていきます。凍る気温に耐性のある「耐寒性(hardyハーディ) → 秋まき春咲き」と凍ることに若干耐性のある「半耐寒性(half-hardyハーフハーディ) → 春まき夏咲き」の大きく分けて二種類あります。
二年草はライフサイクルが完結するのに二年必要です。初めの年は発芽と葉の成長に専念し、二度目の冬を越えた後花が咲き、種を生産し、そして枯れていきます。二年草は十分外で冬越しします。
幾つかの多年草は一年草のように毎年種をまいて育てた方が良いものもあります。耐寒性がないものや、自然界で短命な多年草は一年草のように育てた方が良いでしょう。
② 庭での役割
一年草は庭の中で素早く、可愛らしく、安価に、多量に色を作り出すのに向いています。多くの花は何週間も咲き続けます。その間、カラフルなボーダーガーデンやコンテナガーデンを演出し続けます。
一年草は新しいカラースキーム(色の組み合わせ)に挑戦するのにも使い勝手の良い植物です。スポット的に新しい庭に入れたり、シュラブや多年草と組み合わせて一年を通して変化のある庭づくりをしたりするのに役に立ちます。
〈参考文献〉
SUCCESS WITH SEEDS / Chris & Valerie Wheeler