「株分けとさし木」宿根草とシュラブの増やし方
「フローラルガーデンの庭仕事」H29年1月19日の内容です。次回は2月16日「植物が好む環境選び」庭の環境と世界の環境。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉株式会社フィーカ 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー)
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで
「株分けとさし木」宿根草とシュラブの増やし方
How do you tell when a plant needs dividing? 〜 株分けが必要な時はどんな時? 〜
あなたが植物を増やしたいと思う時、宿根草にとっては株分けして欲しくない時かもしれません。宿根草は大株になる程花をたくさん咲かせ、ガーデンでの存在感が増します。植物が株分けしてほしいかどうかはどのように成長しているかによります。中央が枯死したり、育ちすぎて隣に迷惑かけたり、土のあるところからはみ出したり。宿根草はきっとこんな時に株分けしてほしいのです。
by Alan Titchmarsh
1、宿根草の株分け
宿根草(宿根性の多年草)を成長させる一番の方法が株分けです。多くの宿根草は2〜4年毎に株分けすることで株を健康に保ち丈夫にします。年数の経った特別な植物や貴重な植物は株分けすることで使える植物を増やすことができます。しかし、すべての宿根草が株分けに向くわけではありません。
多くの植物は秋か冬または早春の休眠期に株分けを行いますが、暑く乾きやすい真夏と凍る真冬以外は株分けすることが出来ます。初夏に株分けすると良い植物もあります。プルモナリアやアイリスは新しい根が成長する時期に行うことで株分けによる傷が早く回復しダメージを受けるのを避けられます。株分けした植物は日陰に置いて養生しましょう。どのシーズンに株分けをしたとしても葉を落とすことと湿気を保ち回復するまで守ってあげることで成功させることは可能です。株分けをするために掘り上げた時が土を再生させる良いチャンスです。新しい堆肥をすきこみ有機質を足しましょう。
◎かたまりを形成している植物の株分け
① 親株の周りに子株がついてかたまりを作る高山植物型
〈株分けのしかた〉親株の周りについた子株を優しく引き離す。細かい根がすでについている子株を分けるようにする
〈代表的な植物〉ユキノシタ、大文字草等
② 横すじ状に根がつながる宿根草型
〈株分けのしかた〉横すじ状の根を切るか引きちぎるかして分ける。それぞれの芽に細かい根が残るようにする
〈代表的な植物〉アスター、キク等
③ クラウン状に固まった根になる宿根草型
〈株分けのしかた〉固まった根元に切れ込みを入れ手で引き離すようにする。細かい根はできるだけだけ切らないように
〈代表的な植物〉ギボウシ、クリスマスローズ等
◎球根の種類と株分け
① Bulb バルブ(鱗茎)
〈特徴〉若い葉が変化したもの。下部に円形のベースプレートがある
〈株分けのしかた〉親球根の周りや茎の根元、花後、葉の付け根などに新しい球根ができるのでそれを土に埋めて育てる
〈代表的な植物〉ユリ、スイセン、チューリップ等
② Corm コウム(球茎)
〈特徴〉茎の付け根が大きくなったもの。ひとつの円形の塊の上に芽、下に根が付く
〈株分けのしかた〉親球根の周りに子球根が毎年できるのでそれをとって土に埋めて育てる
〈代表的な植物〉クロッカス、グラジオラス等
③ Tuberテューバ(塊茎)
〈特徴〉茎や根が貯蔵のために肥大したもの。芽が球根全面からものと上からのみ出るものがある
〈株分けのしかた〉休眠期に芽の出る位置が含まれるように球根を切り分ける。芽が含まれていれば根や新芽が球根から出る
〈代表的な植物〉ベゴニア、ダリア、ジャガイモ、サトイモ等
④ Rhizomesライゾム(根茎)
〈特徴〉茎が水平に肥大したもの
〈株分けのしかた〉若い芽と根が含まれているのを確認して切り分ける
〈代表的な植物〉アイリス、アスパラガス、シダ等
2、さし穂が根を出すしくみ
① 根が出る場所
成長する部分を含むさし穂は切られた細胞から新しい根を出す能力があります。植物の茎や葉、根に含まれる成長する部分は活発な分裂細胞(形成層)を持っていて、ちょうど表皮の裏あたり、茎が厚くなっている部分が新しい根が出やすい場所になります。特に節の近くや芽の成長点、根の先端などには活発な分裂細胞が多く集まっています。
② 茎と根のさし穂の違い
茎と根は異なるタイプのさし穂として成長します。茎で作るさし穂は茎から直接根が出ているように見えますが、実は多くの場合切り口を覆ったカルスから出ています。カルスは細胞を守る塊で、傷つけられると反応し形成されます。根挿しは太い根が切られると細かい根が動き出します。根挿し部分は根と茎、両方の成長する部分が含まれていることが必要です。
③ 植物の増殖能力
植物の細胞には成長するための重要な遺伝子が含まれていて植物はどの部分から分かれてもオリジナルのように成長します。枝は切られることで成長ホルモンが動きだし、芽や根が成長し始めます。
3、さし穂作りのポイント
さし木は植物の成長サイクルに合わせることが成功するためには重要なポイントです。健康で活力のある枝を選びましょう。根が出るかどうかはそのコンディションが大きな影響を与えます。
① 緑枝挿しsoftwood cuttings(春一番の新梢枝)
〈さし木の時期〉春から初夏。発根まで2〜3週間
〈注意点等〉発根させるには良い時期だが、乾きが早く、病気にも注意が必要
〈代表的な植物〉宿根草の多く、シソ科、アジュガ、カンパニュラ、ユーフォルビア、ペンステモン
② 半熟枝挿しsemi-ripe cuttings(硬くなり始めた新梢枝)
〈さし木の時期〉初夏〜盛夏。発根まで半年以上
〈注意点等〉落葉樹は葉が付いている間、常緑樹は成育期に行う
〈代表的な植物〉落葉樹の多く、常緑樹の多く、半耐寒性多年草の多く、コニファー、バラ、クレマチス
③ 熟枝挿しhardwood cuttings(熟して硬くなった新梢枝)*その年に成長したもの
〈さし木の時期〉秋〜早春。発根まで半年以上
〈注意点等〉根が出るまでゆっくりだが、病気や乾く心配がない。落葉樹は葉が落ちた後、芽が動き始める早春までの枝を使用
〈代表的な植物〉落葉樹の多く、常緑樹の多く、ラベンダー、バラ、エルダー
④ 根挿しroot cuttings
〈さし木の時期〉晩秋〜早春、発根まで3〜6か月
〈注意点等〉デリケートな植物は早春に行う
〈代表的な植物〉アカンサスモリス、アンチューサ、アネモネ、エキナセア、フロックス、バーバスカム
〈参考文献〉
The Royal Horticultural Society PROPAGATING PLANTS / Alan Toogood
SUCCESS WITH CUTTINGS / Chris & Valerie Wheeler
The Complete How to be a Gardener / Alan Titchmarsh